小路幸也『ホームタウン』

 もしかすると小路幸也という作家は高位安定型なのかもしれない。そんなことを考えています。


 老舗百貨店の顧客管理部【特別室】で探偵的な業務をする柾人。同じ町に暮らしながら5年もの間会うことがなかった妹の木実から届いた手紙には、旭川店に勤める青山と結婚することが書かれていた。だが、式が近くなって突然木実は失踪し、青山も姿を消した。危機を感じ取った柾人は旭川へ向かう。もう戻ることはないと思っていた故郷へ。


 『HEARTBEAT』を読んだときにも魅力的で、温かく、やさしい物語だと思ったのですが、この『[rakuten:book:11512149:title]』でもそれは変わりませんでした。とにかく出てくる人たちがみなやさしく、温かい人ばかり。悪人らしい悪人がいません。そして、バラエティに富んだこれらの登場人物が、柾人に光を当て、その魅力をより引き立て輝かせているかのようです。
 物語としては幼い頃のトラウマになっているような事件と、現在の人捜しという2つをうまく関連付けた感じ。でも、もう少し密接につなげてほしかった気がします。
 そしてラストシーンなのですが、大団円すぎるというか、ここまではいらなかったです。ちょっと取ってつけたような感じがしてしまいます。ここが柾人にとってのこれからの故郷という意味で必要なのかもしれませんが。


 ということで、小路さんならもっといい作品にできたような気がします。きっとそれができる作家さんだと思うので。しばらく、追いかけてみたいと思います。

2006年7月8日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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stars物足りなかった
stars書き下ろしにしてはあっさりした仕上り
starsこみあげるもの!

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