辻村深月『ぼくのメジャースプーン』

 不思議な力を持っている「ぼく」は小学4年生。幼なじみのふみちゃんと仲がいいことが自慢だったけれど、3ヶ月前、大好きだったうさぎが惨殺されてからふみちゃんはショックのあまり自分の殻に閉じこもってしまった。だから「ぼく」はなんとかしたい、この力を使って・・・


 復讐、罪と罰、生命、『ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)』はそういうものに焦点を当てた作品です。でも、説教臭さのようなものはありません。
 おそらくは答えが出ないであろう問題に対して、真っ向からぶつかっていく「ぼく」。絶対に正しいという答えは無いと思うけれど、絶対に間違っている答えはあるだろうし、何よりも考えるという行為は正しいことでしょう。それをこれだけの物語にしてしまった辻村さんの力量に感服。格段にうまくなった気がします。「ぼく」が一人で思い悩むような話じゃないのがいいのかもしれません。


 「ぼく」との対比というわけではないでしょうが、秋先生の大人のかっこよさもすばらしい。あの疑問というか謎も明らかになります。こういった形で少しずつでも作品をリンクさせているのは結構好きだったりします。秋先生がレギュラー化する形でも、他の登場人物でもいいので、次もリンクさせてほしいなぁ。

2006年6月9日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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