大崎梢『配達あかずきん』
「本好きにはたまらない」という言葉を使った感想を見かけることがあります。図書館だったり、古本屋が舞台となった作品たちです。『れんげ野原のまんなかで』『死の蔵書』『淋しい狩人』などなど。僕自身も使ったことがある表現かもしれません。大崎梢さんの『配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)』の舞台は本屋さん。「本好きにはたまらない」という表現が合う作品かも。
書店には謎がいっぱい! 老人が人づてに依頼してきた本は「パンダ出版社」の「あのじゅうさにーち いいよんさんわん ああさぶろうに」だという。これって何?どんな本? 「書店の謎は書店人が解かなきゃ!」と店員の杏子とアルバイトの多絵が書店の謎に挑む連作短編集。
作者の大崎さんは元書店員だそうで、その分書店のリアルな現実が描かれていて、幻想を抱かせない程度に楽しい作品でした。
書店員っていうのは本好きにとっては憧れの職業の一つなのかもしれませんが、例えば本探しだとか配達だとか、そういうことが押し付けがましくない程度に書かれていて、そのバランスがちょうど良かったのです。
ただ、これを「ミステリ・フロンティア」の1作としてみた場合どうでしょうか。若干の物足りなさを感じてしまいます。途中である程度見抜けてしまう謎が多いのです。あるいは、見抜きやすい謎なのではなく、見抜きやすい展開なのかもしれません。とにかく、謎解きの醍醐味が薄れてしまい、驚きが小さいのです。いくら楽しく、良い物語でも、ミステリとしては不満が残ります。次回作に期待。
ちなみに、表紙は「ミステリ・フロンティア」の既刊続刊を全面に敷き詰めた感じ。どれもオリジナルの表紙ではないのですが、雰囲気はそっくり(盗作ではない)。こんな平台、見てみたいですね。
収録作:「パンダは囁く」「標野にて 君が袖振る」「配達あかずきん」「六冊目のメッセージ」「ディスプレイ・リプレイ」
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