アンソロジー『殺人鬼の放課後』

 『名探偵は、ここにいる』に続く《ミステリ・アンソロジー》の第2弾。収録作の内容からすると、『殺人鬼の放課後』という書名はともかく、《ミステリ・アンソロジー》というのはちょっと相応しくないような気がします。


恩田陸 「水晶の夜、翡翠の朝」
 『麦の海に沈む果実』のあの学園が舞台。学園では「笑いカワセミ」という遊びが流行っていた。悪意のこもった遊びは徐々にエスカレートして・・・やっぱりヨハンはこうでないと。こういうものを書かせると恩田さんは抜群ですね。
小林泰三 「攫われて」
 「わたしたち、誘拐されたの」と恵美は語りだした。小学校の帰りに、寄り道をしていて幸子、馨とともに誘拐された恵美は・・・真相とか結末とかの驚きよりも、この描写は生理的にちょっと受け付けがたいものがありました。
新津きよみ 「還って来た少女」
 七穂は、自分によく似た少女を見たという話を聞き、その少女に会うためにその場所に行って見たが・・・「殺人鬼」よりも「放課後」。読みやすい作品で後味もよかったのですが、その分物足りなさが残りました。
乙一 「SEVEN ROOMS」
 姉とともにさらわれた僕は、コンクリートで囲まれた部屋に閉じ込められた。部屋の真ん中ある溝に入ると、上流と下流にそれぞれ3つずつ部屋があり・・・なんとも奇妙で恐ろしく、そして切ない傑作。一読の価値あり。


 頭ひとつ抜けているのが「SEVEN ROOMS」。続いて「水晶の夜、翡翠の朝」でしょうか。『麦の海に沈む果実』を読んだあとのほうが楽しめますね。個人的には「攫われて」の分だけ減点ですね。ホラー系は苦手なんです。ごめんなさい。


収録作:恩田陸「水晶の夜、翡翠の朝」/小林泰三「攫われて」/新津きよみ「還って来た少女」/乙一「SEVEN ROOMS」
関連作:『名探偵は、ここにいる』『血文字パズル

2006年5月31日読了 【4点】にほんブログ村 本ブログへ
殺人鬼の放課後―ミステリ・アンソロジー〈2〉 (角川スニーカー文庫)
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おすすめ平均 star
star恩田陸は…
starミステリ・アンソロジー?より少し、まし
star乙一と、かろうじて恩田陸のおかげで読める本
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