恩田陸『麦の海に沈む果実』

 二月最後の日、理瀬は湿原に囲まれた学園にやってきた。そこは「三月の国」と呼ばれるところ。三月以外にやってきた転入生は学園を破滅に導くと言い伝えられていた。理瀬は学園内でもはんぱものの《ファミリー》に加えられたが、そのファミリーでは2人の生徒がいなくなっていた。


 恩田さんの作品を読むとき、いつもどんよりとした曇り空のようなイメージがありました。過去にどこかで書いたかもしれません。天気が描かれているものばかりではなくて、おそらくはやってくるであろう事件や危機といったものへの予感がそんなイメージになっている気がします。
 今回の『麦の海に沈む果実 (講談社文庫)』もそれは同じでした。もちろん、湿原に囲まれた学園で天候が不順といった舞台設定もあるでしょうが、やはり何やら不穏な感じを読み取ったのでしょう。


 さて、『三月は深き紅の淵を』の第4章「回転木馬」の姉妹編ともいうべきこの作品、いなくなった2人はどうなったのかという謎などを解き明かしながら、学園での生活や行事が次々と語られていきます。そしてミステリとして読んでいくと実はファンタジーだった、といった印象でした。似た印象を持ったのは友桐夏さんの『白い花の舞い散る時間』でしょうか。
 人物の書き分けがうまいのか、実際にはありえないようなこの学園にも違和感無く、純粋に物語を楽しむことができました。


関連作:『三月は深き紅の淵を』『黄昏の百合の骨』『図書室の海』『殺人鬼の放課後

2006年5月3日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
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star最後まで報われない
star麦の海に沈む果実
star時季外れの転入生。
stars雰囲気は最高!
stars恩田陸を大好きになった作品です。

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