乾くるみ『塔の断章』

 ネタバレするつもりはありませんが、念のため未読の方はご注意ください。


 女が墜落死した。女は妊娠していたが、一緒にいた男に落とされたのだった・・・小説『機械の森』のゲーム化プロジェクトスタッフは十河家の別荘で余暇を過ごしていたが、宴の翌朝、社長令嬢の十河香織が墜落死しているのを発見した。自殺なのか、他殺なのか、他殺なら犯人は誰か? 香織の兄秀一はプロジェクトのリーダー天童と『機械の森』の作家辰巳まるみに調査を依頼した。


 辰巳まるみを語り手として事件や生い立ちその他の様々なことがコマ切れになって語られる「塔の断章」が、物語の大部分を占めています。まさに『塔の断章』というタイトルどおりです。その前後を短い「塔の序章」「塔の終章」で挟んでいて(文庫版では「塔の解説」も)、はじめにこの構造ありきで作られているため、読みにくいことこの上ありませんでした。決して長い作品ではないのですが、読み返して確認しようとはちょっと思えません。
 ただ、作者としてはおそらくはそれも折り込み済みだろうし、逆にそれを利用して読み手を惑わしているのかもしれないと考えると、失敗どころか成功かもしれないとも思ったりします。


 一応、読み終えるまでに犯人もわかったし、ある程度の謎も解けました。ただ、探偵役が何を根拠に犯人を当てたのかがわかりませんでした。いや、わからなくてもいい部分かもしれないけれど。読み込みが足りないのかなぁ。でもこういう試みも面白いですね。


 あと、「塔の解説」のように自分でネタバレするのは、やっぱり格好悪いですよ。別の場所で語るとか、別の人に語ってもらうとかならいいけど。「理解してもらえないから」って感じがするじゃないですか。あ、親切心なのかな。

2006年4月30日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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