伊坂幸太郎『終末のフール』

 後悔が1つ。それは今まで、伊坂幸太郎という作家と出会う機会を得なかったこと。


 8年後に小惑星と衝突し、地球が壊滅すると発表されて5年がたった。人類は一時の騒乱状態を脱し、なんとか平穏な生活を取り戻しつつある。それはここ、ヒルズタウンでも。終末を3年後に控え、人々はどのように過ごすことを選択するのか。


 初めて読む伊坂作品『終末のフール』は、切なさと温かさが入り混じった作品集でした。読んでよかったと素直に思えます。
 3年後に迫った終末までの時間をどのように生き、どのように終末を迎えるのか。人生観が問われるようなこの舞台で、自分だったらどうだろうかと幾度となく自問しながら読みました。果たして静かに人類の終焉を待つのか、それとも・・・
 特に2人の子を持つ親として、「太陽のシール」はなかなか考えさせられるのと同時に、読み応えがありました。せっかく授かった子どもなのに、産まれてきたとしても終末までの3年間しか生きられない。それを承知で産むべきか、それとも苦しませないために産まないべきか・・・難しい選択ですよね。あるいはこの終末に「みんなで死ぬことができる」という幸福を見出した土屋。切なさの中に温かさが入り混じり、ちょっぴりユーモアのある典型的な作品でした。妻美咲の優しさと強さもとても魅力的でした。
 正直なところ、この伊坂幸太郎という作家の小説に感動し、これほど高い評価をつける自分を想像していませんでした。これから少しずつ、伊坂さんの作品を読んで生きたいと思います。


 幸福が1つ。それは今、伊坂幸太郎という作家と出会う機会を得たこと。


収録作:「終末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」

2006年4月16日読了 【9点】にほんブログ村 本ブログへ

【感想拝見】

おすすめ平均
stars全編通してエンディングのようなまったり感
stars無理してまで出すべき作品ではないだろう
stars終末騒動の混乱の物語
stars心が温まりました。
stars神の目線なのかしら?

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