永嶋恵美『一週間のしごと』

 永嶋恵美さんの『一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)』を読了。


 猪突猛進型の女子高生・菜加には1つの癖があった。拾い癖である。幼馴染の恭平はいつも菜加の拾い癖に悩まされてきたが、今回はさすがに厄介だ。菜加が渋谷で拾ってきたのは、人間の子どもだったのだ。事態は菜加の弟・の克己や恭平のクラスメイトの忍を巻き込んで思いも寄らない方向へ・・・。


 東京創元社ミステリ・フロンティアの20作目。謎解きものとしては弱いものの、青春サスペンスとしてなかなかおもしろく読めました。
 序盤のアキバ的な描写や菜加の傍若無人な振る舞いには辟易したものの、事態の進行とともに変容していくスリリングな展開はなかなかのものです。
 また、小道具の使い方もちょっとおもしろいものでした。携帯電話のサーチ機能やUSBメモリーといった最近のものから南京錠といった古いものまで。特に携帯電話は自然な形で様々に活用されていて、この描写だけでも現代の10代の実態を映し出しているといえるかもしれません。


 ただし、各章の最後の部分からある程度容易に真相の一端を垣間見ることができてしまうのは残念。読者としてはこれによって「意外な真相」という言葉から遠く離れてしまいます。はっきり言って不要でしょう。
 推理の過程とか、登場人物たちの行動とかに、若干不自然な感じがしないわけではないですが、それを差し引いても最後までハラハラ、ドキドキできるサスペンスでした。絶賛まではしませんけどね。

2006年4月5日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
おすすめ平均
starsなぜこの表紙?
stars小さな親切・・・
stars一週間の冒険ミステリ
stars退屈しない一週間!
stars勢いのある1週間ミステリー

Amazonで詳しく見る by G-Tools
asin:4488017207 rakuten:book:11553021