柴崎友香『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』

 16日に柴崎友香さんの『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? (河出文庫)』を読了。


 表題作「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」という中編2作を収録。


「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」
 大阪から東京まで、望は友人の恵太とルリ子が東京ディズニーランドまで行くのに「コロ助の告白の応援」という名目で便乗する。男3人、女1人のロングドライブの行方は・・・
 なんといっても素敵なのは、望とコロ助の絶妙な掛け合いのようなやり取り。かつて学生カメラマンとして将来を嘱望されていた望。惰性とわがままとかつての栄光だけを頼りに生きているような彼が、東京までの短い時間におそらくはちょっとしたことをきっかけにふたたび前進を始めようとする姿がいいと思うのです。
 ほとんど道中4人だけで話が進むためか、登場人物がはっきりしていて読みやすいのもいいですね。
「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」
 「戦うこと 眠らないこと」と今年の抱負を決めたが、いつでもどこでも眠ってしまう主人公の女子大生。原因は好きだった花田くんが映画の修行にロンドンへ行ってしまったという失恋だった・・・
 全く以って困った主人公です。「戦う」なんていっても物騒なものではなく、コミカルかつほんわかとしたムードで流れる物語です。


 柴崎さんの作品は物語の持つ雰囲気と関西弁の会話によるやわらかさ、やさしさが微妙にかみ合っているところが気に入っています。
 もちろん、関西弁にも刺々しい部分や激しい部分があります。でもそういった部分はできるだけうまく避けて、上質な部分を抽出しているのかななんて思ったりします。

2006年3月16日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ

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