東野圭吾『レイクサイド』
8日に東野圭吾さんの『レイクサイド (文春文庫)』を読了。
アートディレクターの並木俊介は、家族とともに中学受験対策の合宿のために姫神湖畔にやってきた。だが、そこで俊介の部下であり愛人でもある高階英里子が殺されてしまった。しかも、殺したのは妻の美菜子だという。この危機をどうやってのりきるか。
『もう殺人の森へは行かない』というタイトルで連載されたものを下敷きに新たに書き下ろした作品。2004年には映画化(『レイクサイド マーダーケース [DVD]』)にあわせて『レイクサイド 新装版』も出ました。
最近の東野さんの作品には、「テーマが重い」「重厚」なんていうイメージがつきまとっていたのですが、そういう意味では文庫本300ページ足らずで、比較的取っ掛かりやすいものでした。
なにか淡々と事件が進行していく気がして引っ掛かりを覚えたのですが、千街晶之さんの解説を読んで「なるほど」と思いました。内心とか、感情とかそういうものを出さずに、ただひたすら表面的な描写に終始していたのですね。これは実験的な取り組みですね。そういった意味では、映像化は比較的向いていたのかもしれません。
ただ、最初から「これが真相ではない」という感覚が常につきまとうので、衝撃度はどうしても低くなってしまいます。
親子、夫婦、お受験などなど、いろいろな要素を取り入れながらも散漫にならないようにうまくまとまり、これが直木賞作家の実力といったところでしょうか。
小品ではありますが、なかなか締まったサスペンスです。
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