恩田陸『ねじの回転』
7日に恩田陸さんの『ねじの回転―February moment (上) (集英社文庫)』『ねじの回転―February moment (下) (集英社文庫)』を読了。
近未来、人類は時間遡行の技術を手に入れ、国連は過去の「歴史の転換点」を再生・確定させる作業に着手していた。日本において選ばれた転換点は「二・二六事件」。安藤輝三、栗原安秀、石原莞爾の3名に懐中連絡機を持たせ、史実と違わぬよう再生作業を行うのである。しかし、何度かの「不一致」を繰り返したあとの再生で、叛乱軍は身代わりを使って生き延びたはずの岡田啓介首相を殺害してしまったが「不一致」にはならなかった。このまま歴史は確定してしまうのか・・・
「二・二六事件」というと宮部さんの『蒲生邸事件』があるわけですが、あちらが外伝的であるのに対してこちらは歴史のIFをSFで表現した作品です。同じ題材ながら全く違う切り口です。歴史のIFというのはずいぶん使い古されたものではあるのですが、その辺はうまく処理されている気がします。
例えば、こういう歴史IFものの場合、その時代や事件に対するある程度の知識が必要となります。ところがこの作品では「皇道派」「統制派」「昭和維新」などという、本来「二・二六事件」を語る上で必要不可欠なキーワードを知らなくても十分に楽しむことができます。作中に二度挿入される「二・二六事件」の説明文もわかりやすく、しかもニヤリとしてしまうものですし。
当然のことながら懐中連絡機を持った3名にはそれぞれに思惑があり、思うようには進まないのですが、それだけではなくHIDSだったりハッカーだったりといういろいろな要素が再生の妨げになり、よりスリリングにしています。
大変おもしろかったのですが、最終盤のあたりでちょっとそれまでと違った方向へ話が行ってしまって、「二・二六事件」はどうなってしまうのだろうという興味が弾き飛ばされてしまったのは残念と言うか物足りないと言うか。確かに伏線は引かれていたのですが、個人的にはちょっと減点です。
【感想拝見】- KEN太's日記さま(2006.03.16追加)
- ChiekoaLibraryさま(2006.06.28追加)
- 神様はその辺をウロウロしていませんさま(2010.03.23追加)
ねじの回転―February moment (上) | ねじの回転―February moment (下) |
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