近藤史恵『モップの精は深夜に現れる』
6日に近藤史恵さんの『モップの精は深夜に現れる (ジョイ・ノベルス)』を読了。
シリーズ前作『天使はモップを持って (ジョイ・ノベルス)』に引き続き、オフィスビルの清掃作業員キリコが大活躍する短編集。前作が大介の一人称だったのに対し、1編ごとに別の主人公がキリコに救われる様を一人称で描いています。
●「黒い芽」
娘とのコミュニケーションに悩む栗山。職場には少々困った新しい部下が二人、そして新たにやってきた上司は職場の不正を暴くことに定評があった・・・社内のからくりを明らかにするだけではなく、栗山家にふたたび暖かさを取り戻してしまうキリコ。それにしてもこんな考え方の上司は持ちたくないものです。
●「鍵のない扉」
猫アレルギーだった社長が病死した。職場には不自然なほど大量の猫の毛が残されていた。はたして本当に病死なのか・・・人が死んでいるからというわけではないですが、4編の中で一番ミステリらしいかも。
●「オーバー・ザ・レインボー」
ケンゾーにサーシャと二股をかけられていた葵。しかもサーシャは妊娠していた。身に覚えがない悪戯メールの疑いをかけられたり、屋上に閉じ込められたりと葵の受難は続くが・・・美しくなることに魅せられた社会の出来事。代わりのいないオンリー・ワンにはなかなかなれないですよね。
●「きみに会いたいと思うこと」
キリコが旅行に出てしまった。突然、しかも行き先もつげず1ヶ月も。祖母の面倒はキリコが事前に手配した施設で見てもらっているし、キリコから定期的にメールが届いているが・・・ここでようやく大介が登場。キリコが謎を解くだけでなく、こういう話が入っているところもこのシリーズの魅力のような気がします。
軽快なタッチで書かれているし、読みやすいので重苦しさのようなものとは無縁。全体としては人間の悪意というよりは人間の弱さを中心にすえた短編集かな。シリーズものですが、前作を読んでいなくても特に問題はないでしょう。ただ、読んでおいたほうが楽しめるとは思います。
なんとなく前作の方がキリコが大人っぽかった気がするのですが、気のせいでしょうか?
収録作:「黒い芽」「鍵のない扉」「オーバー・ザ・レインボー」「きみに会いたいと思うこと」
関連作:『天使はモップを持って』
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