辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』
一週間以上かけて辻村深月さんの『冷たい校舎の時は止まる』を読了。
センター試験も間近に迫った冬の日、登校した深月たちは不思議な力で学校に閉じ込められてしまった。そこには、仲のよかったクラス委員たち以外には生徒も教師もいない。おまけに、時計はすべて5時53分で止まっていた。5時53分。それは、2ヶ月ほど前の学園祭最終日にクラスの1人が校舎の屋上から飛び降りた時刻・・・そして、深月たちは誰一人として自殺した級友の名を思い出せなかった・・・
第31回メフィスト賞受賞作。
ミステリとして見れば、自殺したのは誰なのか、どうして校舎に閉じ込められてしまったのか(=「ホスト」は誰なのか)、という2点の謎解きなのでしょうが、そんなことをすっかり忘れて読んでしまいました。だから、下巻で解決編の前に「読者への挑戦」らしきものが挿入されていてびっくりしました。
さて、デビュー作にして3巻組みの大長編だったわけですが、結果としてみればやはりやや長すぎた気がします。
もちろん、この物語が成立する条件として、閉じ込められたクラス委員それぞれのエピソードを描くことは必要だったでしょう。実際、バラエティーに富んだ短編小説のようでした。特に8人の心理描写は丁寧で、なかなかうまく8人を書き分けていたように思います。
ただし、丁寧に書き分けているがゆえに1人にあてる分量が長く、それが8人分ということでこのノベルス3冊という長さになってしまったのでは。この長さを冒頭の2点の謎解きで引っ張るのは少々無理があったように感じられました。まして、この幻想的な青春ミステリにおいて「読者への挑戦」で論理的な解決を求めるのはちょっと・・・
とは言え、この長い物語を楽しく読んだのは確かなこと。基本的に青春小説は好きなので、多少の瑕疵は気になりません。長くても一気読みしたくなるような物語でした。それだけに、この3冊が3ヶ月に分けて刊行されたことには疑問符をつけたくなります。
デビュー作だけに、良くも悪くも瑞々しさがあり、同時に粗も見られました。でも、この年の瀬にまた1人今後を期待できる作家さんを見つけた気がします。第2作『子どもたちは夜と遊ぶ』も上下巻の2冊と長めの作品のようです。来年のお楽しみです。
↓ 3階建てです。冷たい校舎の時は止まる (上) (講談社ノベルズ) | 冷たい校舎の時は止まる (中) (講談社ノベルズ) | 冷たい校舎の時は止まる (下) (講談社ノベルス) |
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