法月綸太郎『生首に聞いてみろ』

 月曜の夜遅く、というかもう朝が近い時間になって法月綸太郎さんの『生首に聞いてみろ』を読了。


 綸太郎が後輩田代周平の写真展で会った美少女は、懇意にしている翻訳家川島敦志の姪であり、著名な前衛彫刻家川島伊作の娘江知佳だった。しかし、伊作はその日ガンに倒れ翌日未明に亡くなってしまう。彼の代表作は江知佳を妊娠した妻を型にとった『母子像』であり、亡くなる直前には娘江知佳をモデルとした作品を完成させていた。だが、伊作が病院に運ばれた直後、その作品の首から上を何者かが切断し持ち去っていた・・・


 昨年の「このミステリ−がすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」で二冠を獲得した作品。作者としては1994年の『二の悲劇 (ノン・ポシェット)』以来10年ぶりの長編です*1
 内容は徹頭徹尾本格推理。落ち着きとおもしろさを兼ね備えた円熟の作品です。
 とくに登場人物の言動とその動機には力が注がれていたのか、非常に現実的で、作り物めいた違和感を感じませんでした。探偵役の綸太郎がありがちなスーパーマン探偵ではなく、間違いや失敗を繰り返し、苦労して真相にたどりつくというのも、より現実的な気がします。


 ただし、地道な操作を続けて真相にたどりつくタイプの探偵ですので、論理の飛躍がない分真相に対する驚きもやや薄いと思います。それに加えてラスト付近はやや駆け足で進んでしまったようで残念でした。
 とくに驚いたのは2箇所。生首と各務夫人でしょうか。生首はうすうす感づくものの物語の先を考えると本当によいのか疑問でしたし、各務夫人については作者にしてやられたかと。
 緻密に伏線が張られた美しい本格ミステリでした。


関連作:『雪密室』『誰彼』『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』『法月綸太郎の冒険』『二の悲劇』『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績

2005年12月12日読了 【8点】にほんブログ村 本ブログへ
おすすめ平均
stars“THE GORGON’S LOOK”≒メデューサのまなざし
stars冗漫な感じ
stars一気に読んでしまえるのですが…
starsおもしろかったけど
stars法月綸太郎の青春の終わり

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