北村薫『ニッポン硬貨の謎』
先月のことになってしまいましたが、北村薫さんの『ニッポン硬貨の謎』を読了。
1993年、北村薫は東京創元社の戸川氏から依頼され、エラリー・クイーンの未発表作品『The Japanese Nickel Mystery』の翻訳を手がけることになった。『The Japanese Nickel Mystery』・・・それは1977年に来日したクイーンが、女子大生小町奈々子とともに東京で発生している幼児連続殺人事件の謎と、奈々子が体験した両替男の謎に対峙するというものだった。
やっぱり後悔しています。クイーン作品*1を読んでいないことを。
『The Japanese Nickel Mystery』を翻訳したという体裁のパスティーシュ。
正直言って、最初はクイーンだろうがキングだろうが大したことではなくて、ただ『競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)』の回答が読みたかったのです。クイーン、何冊か持っているけど読んだことはないし。
しかし、奈々子の言葉として展開される北村さんの「クイーン論」は結構興味深いもので、クイーン未読の僕でも何だかわかったような気にさせられてしまいました。いや、わかった気だけでおそらくその何倍も深い内容なのでしょうが。
ですが、『競作五十円玉二十枚の謎 (創元推理文庫)』の回答としてはどうでしょうか。う〜ん、なんとなく無理があるというか、腑に落ちないというような気分です。もう少しシンプルに繋げられた回答、「なるほど!」と手を打つような回答が欲しかったですね。
ちなみに、チョコチョコと入ってくる注釈ですが、うるさく感じたのは最初だけでした。『「訳者北村薫が訳したという設定の、作家クイーンが書いたことになっている日本にいる探偵(?)クイーンの言動」に対して、「注釈を使って突っ込む訳者北村薫」』を書いている北村さんを想像して、思わずにやりとしてしまいました。
また、クイーンと奈々子のやり取りには、円紫さんと私のイメージが重なって、こちらもにやりでした。
クイーンのパスティーシュにして、「クイーン論」であり、そして五十円玉二十枚の謎の回答編でもあるという贅沢な1冊です。どちらかと言えば、マニア受けする作品かもしれません。
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