真保裕一『発火点』

 真保裕一さんの『発火点 (講談社文庫)』を読了。


 21歳になる杉本敦也は東京で自堕落な生活を続けていた。敦也は9年前の12歳のとき父親を殺され、「父親を殺された子」という哀れみ、同情に耐えられず、それを引きずっていたのだった。やがて、父の友人だった犯人が仮出所することを知った敦也は、あの漁村へ帰ることを決意する。どうしてあの人は、父を殺したのだろうか・・・


 父を殺害された息子が、自分のあるがままの姿を受け止め、過去を悔い改め再生していく物語。 21歳の敦也の章と、12歳の敦也の章が交互に語られています。
 2年ぶりに読んだ真保作品は、扱われているテーマが既読のものよりも重く、なかなか読みすすめるのに手間取ったのは確か。「小役人シリーズ」などのほうがまだ読みやすかったと思います。
 また、最後にちょっとした驚きがあったのですが、それもスパッと切れ味が良いとは言いにくい印象。いろいろなものを詰め込みすぎているのかな。構成を含め、全体としてもう少しシンプルでも良かった気がします。


 もっとも、悪いところばかりではありません。相変わらず文章はうまいし、読み応えのある作品でした。作者の意図も十分に伝わったと思います。
 ただ、「受取人」に対して伝えたいことが一番最後に位置していて、これを読んで自分の気持ちを知ってほしいと願って送るのは、やっぱり身勝手なのではないでしょうか。そこまで深読みさせるつもりで書いているなら、それはそれですごいのですが。

2005年10月13日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
発火点 (講談社文庫)
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おすすめ平均 star
star残念
star展開が中途半端
star人間ドラマ
stars読後も不満が残った
stars暗い

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