大沢在昌『ザ・ジョーカー』
昨日、大沢在昌さんの『ザ・ジョーカー [ 大沢在昌 ]』を読了。
着手金は100万円。仕事として殺しは引き受けないが、自分の身を守るためには殺しも躊躇しない。それが裏社会のトラブルシューター・ジョーカー。盗品の奪還から人探し、連れ戻しまで何でも引き受け、解決する・・・
大沢さんの新シリーズはハードボイルドの短編集。
「裏社会」という言葉にダーティーな印象を持っている人は多いかもしれませんが、ジョーカーに限ってはクリーンなトラブルシューター。自分で決めたルールを自分に課し、忠実に守る。そんな生き方。おおっ、これこそハードボイルド。
本作に収録された短編は約10年間に渡って書かれたものです(ただし、これ以前に本作に収録されていないものもある)*1。そのため、最近の作品と最も過去の作品ではやや時代背景に変化があって、特に最初期の「ジョーカーの当惑」(1993年)はどうしても古臭さのようなものを感じてしまいます。
しかし、それでもおもしろいのが本作。すっと世界に入り込むことができ、さらっと読めて、あっというまに読み終えてしまえるような作品。そして、読み終えてしまうことが惜しく思える作品なのです。特にラストの「ジョーカーの伝説」は、ジョーカーの過去が絡み、物語の厚みを増しています。「どうせならもう1〜2作」とも思うのですが、こういう締め方がちょうどいいのかもしれません。
今月下旬には続編の『亡命者 [ 大沢在昌 ] ザ・ジョーカー』も発売されるそうです。楽しみです。
収録作:「ジョーカーの当惑」「雨とジョーカー」「ジョーカーの後悔」「ジョーカーと革命」「ジョーカーとレスラー」「ジョーカーの伝説」
ザ・ジョーカー (講談社文庫) | |
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*1:ちなみに、『死ぬより簡単 (講談社文庫)』に収録された「12月のジョーカー」は既読のはずですが覚えていません・・・