竹宮ゆゆこ『わたしたちの田村くん』
2005年上半期ライトノベル板大賞に選ばれた竹宮ゆゆこさんの『わたしたちの田村くん [ 竹宮ゆゆこ ]』を読了。
優秀でモテ系の兄弟に囲まれた非モテ系の田村雪貞。そんな田村くんの中3の夏、高1の春の物語。中編連作。
●「うさぎホームシック」
中学生活最後の夏、進路希望に「月へ帰る」と書き続ける不思議な少女松澤小巻のことが気になり始めた田村くん。なんとかアタックしようと、毎朝グラウンドを走る元陸上部の松澤さんといっしょに走ることになるが・・・
●「氷点下エクソダス」
高校1年の春、田村くんの前の席に座るのは、バレンタインデーに兄の部屋と間違えて窓を割りチョコを投げ込んできた暴力美少女、相馬広香だった。
●「高浦さんちの家族計画」
おまけの掌編。田村くんの旧友、高浦の複雑怪奇な家庭をご紹介。
何の変哲もないただのラブコメ。
もてないはずの情けない男が、なぜか中学では不思議な美少女に好かれ、そして高校でクールで孤独な美少女に好かれるという、ベタなラブコメ・・・
しかし、これがおもしろいのです。
平易で読みやすくテンポの良い文章。ところどころで挿入される適度なユーモア。
しかしなんといっても2人のヒロインが持つ過去のシリアスなエピソードが、物語の展開に密接かつ自然な形で関与していて、リアリティーがあるのです。人物の行動に動機を与えているとでもいえるでしょうか。
もちろん、いわゆる「萌え」の要素も含んでいると思います。しかし、それだけを売りにした諸作とひとまとめにしてしまうには惜しい作品です。
また、続きを期待させる「氷点下エクソダス」のラストも秀逸。すべてがまとまり物語に「完」の一文字を打つところに、ただの一言だけで物語の世界を正反対に回転させ、この1冊を序章にしてしまいました。恐るべし。
収録作:「うさぎホームシック」「氷点下エクソダス」「高浦さんちの家族計画」
わたしたちの田村くん (電撃文庫) | |
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