坂木司『青空の卵』
昨日、坂木司さんの『青空の卵 (CRIME CLUB)』を読了。
外資系保険会社に勤務している坂木司。友人の鳥居真一はひきこもりで、外界との接触をできるだけ絶っている。そんな鳥居を外に引きずり出そうと、坂木はさまざまな謎を持ち込み、関係する人々と鳥居を関わらせていく。驚異的な推理力で、鳥居は謎を解き明かし、同時に少しずつ、外界に足を踏み出していく。
創元クライム・クラブから出された、坂木司さんのデビュー作。
どうも、この作品の本質は謎を解くことではなく、ひきこもりの鳥居が坂木に促され外に出て行くこと、それと性差別などの社会問題にあるらしい・・・と言いたくなるくらい、謎解きの要素が薄い作品。
鳥居の成長については、この後続くシリーズの『仔羊の巣』『動物園の鳥』というタイトルからも明らかでしょう。1つの謎を解くことによって1人ないしは数人の人と出会い、以後その人たちはレギュラーのように登場する形態をとっているようです。
また社会問題は、坂木の体験に端を発し、鳥居がぞんざいな口調で説教、あるいは糾弾するような感じ。この説教臭さが苦にならなければ・・・。
謎解きは、確かにいろいろな伏線が提示され回収しているのですが、それだけでは足らない部分を鳥居の推測と関係者の告白が補っている感じ。そのためか、なんとなく説得力に欠ける気がします。
最後に、鳥居と坂木の関係なのですが・・・この自覚的な共依存の関係が読んでいて非常に引っかかります。苦になるというほどではないのですが。もしかして、これが一番の売りですか。
とにかく、評価としては今後に期待といったところ。もう1作、読んでみようかという気にはなりました。
収録作:「夏の終わりの三重奏」「秋の足音」「冬の贈りもの」「春の子供」「初夏のひよこ」
【感想拝見】- 粋な提案さま(2009.03.31追加)
青空の卵 (CRIME CLUB) | |
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