畠中恵『百万の手』

 週末、畠中恵さんの『百万の手 (ミステリ・フロンティア)』を読了。


 中学3年生の夏貴は頼りになる親友・正哉を不審火で失った。しかし、正哉は遺品であった携帯電話の中に現れ、夏貴に不審火の真相究明を頼むのであった。さっそく調査を始める夏貴だったが、不審火事件の裏には想像を絶する真相が待ち構えていた・・・


 時代物で評判がよい畠中さんですが、初めて読みました。
 最初は携帯電話の中に正哉が現れるというSFミステリ的な設定から、ファンタジックな世界をイメージしていたのですが、そんな想像は見事に裏切られ、中盤からはなにやら重く人臭い要素を含んだテーマに方向転換してしまいます。ある意味、SFチックな部分も残りますが。
 物語の中で重要と思われるような登場人物が、どんどん退場していくのにもびっくり。もっと一人一人の人物を活かせたような気がします。もしかしたら全体が長くなりすぎたので、そういう部分を削ったのかもしれません。
 結果的に、前半と後半で登場人物、テーマ、雰囲気などがらりと変わってしまい、前半が後半に活かされていない感じ。前半の設定、後半の真相とも興味深く、物語もおもしろかったし、文章力もある方だと思うので、そこが残念でした。


 失礼な言い方かもしれませんが、今後畠中さんはうまくいけば宮部みゆきさんのような作家さんになられるかもしれないという気がします。期待したいです。

2005年5月19日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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