古処誠二『少年たちの密室』

 明日が返却期限だった古処誠二さんの『少年たちの密室 (講談社ノベルス)』を読了。


 突然起きた東海大地震。倒壊したマンションの地下駐車場に閉じ込められた6人の生徒と1人の担任教師。暗闇の中、二手に分かれて反目しあう生徒たちと何とか間を取り持とうとする担任教師。しかし、助けがくるのを待つうちに、生徒の1人が死亡する。落ちてきた瓦礫が頭にぶつかったのか、それとも誰かが・・・


 『UNKNOWN』でメフィスト賞を獲得してデビューした古処さんの第2作。倒壊したマンションの地下駐車場に閉じ込められる形でできてしまった密室という、極限状態での本格推理。密室というよりも、クローズド・サークルといったほうがいいかもしれません。
 本来なら、駐車場内での謎が解き明かされた時点で物語としては幕を下ろすところですが、そこをもう一ひねり。物語の中心、そして本当に書きたかったことはここにあったのではないでしょうか。見事に、それまで構築してきたものを突き崩してくれます。端整で、そして読み応えがあるミステリです。
 タイトルから、爽やかな青春ミステリを想像していたのですが、「爽やかな」という部分の期待は見事に裏切られました。確かに青春ミステリなのですが、テーマがテーマなだけに重く、読後感は悪く、とても「爽やか」という表現には当てはまらないものでした。特に本当の真実が明らかになった後、より強くそんな気分になりました。


 文庫版は加筆修正され『フラグメント (新潮文庫)』に改題。どこがどう変わったかわかりませんが、『フラグメント』・・・なるほど。

2005年5月10日読了 【6点】にほんブログ村 本ブログへ
少年たちの密室 (講談社ノベルス)
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