樋口有介『刺青白書』

 樋口有介刺青(タトゥー)白書』を読了。


 CMアイドル神崎あやが、隅田川のほとりの自宅マンションで殺された。10日ほど後、テレビ局のアナウンサーに内定していた伊東牧歩が隅田川で水死体となって発見された。2人とも、三浦鈴女にとっては中学時代の忘れてしまったような同級生だった・・・


 おなじみ柚木草平シリーズ。今回柚木は、鈴女の父が編集長を勤める雑誌から神崎あや殺人事件の原稿を依頼され、事件に関与していきます。しかし、物語は柚木の視点と鈴女の視点の双方が使われた三人称で書かれていて、その分いつもに比べて柚木のイメージが薄く、どちらかと言えば脇役にまわっている気がします。従来の柚木シリーズに他の青春もののテイストを加えたお得な内容という解釈もできるかもしれませんが。


 殺害されたあや、牧歩と鈴女の関係から、当然のように彼女たちの中学時代の同級生が多数登場してきます。卒業から6年の歳月がたち、その間にみんなそれぞれの人生を生きています。過去はよい思い出だったり忘れたい思い出だったり、あるいは忘れてしまったものであったり・・・事件の真相そのものは結構ドロドロとした悲しいものなのですが、それをそんな風に感じさせないのが樋口さんの作風ですね。爽やかなエンディングで締めくくってくれます。


関連作:『彼女はたぶん魔法を使う』『初恋よ、さよならのキスをしよう』『探偵は今夜も憂鬱』『誰もわたしを愛さない』

2005年5月3日読了 【7点】にほんブログ村 本ブログへ
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