加納朋子『虹の家のアリス』
5日に加納朋子さんの『虹の家のアリス (本格ミステリ・マスターズ)』を読了。
『螺旋階段のアリス』の続編で、本格ミステリ・マスターズの1冊として刊行された連作短編集。前作のテーマが「夫婦」であったのに対し、「家族」がテーマ。仁木順平、市村安梨沙はもちろん、少なからず登場人物は前作から引き続いているので、まず前作を読んだあとに読まれることをお勧めします。
以下、各編について。
●「虹の家のアリス」
育児サークルへの度々の嫌がらせ。会場の部屋の鍵が付け替えられたり、勝手にキャンセルされていたり・・・意外な犯人、意外な動機が微笑ましいです。
●「牢の家のアリス」
産婦人科でおきた新生児誘拐。しかも密室から。あまり悪意が感じられないだけに始末が悪い気がします。
●「猫の家のアリス」
ネットの猫好き掲示板に猫殺しの被害の書き込みが続く。しかも猫の名前のイニシャルはA、B、C、と続く。「次は自分の猫?」と心配になったDの猫を飼う女性が仁木に相談してくるが・・・ある意味では「牢の〜」よりも悪意を感じるけれども、作風がそれを打ち消している気がします。
●「幻の家のアリス」
安梨沙の実家のお手伝いさんが、最近自分に対して安梨沙が冷たい理由を調べてほしいと依頼してくる・・・ターニングポイント。この前と後でがらりと変わります。
●「鏡の家のアリス」
結婚を決めた息子から、出張中に婚約者をストーカーから守ってほしいと頼まれるが・・・反転した世界がもう一度反転して元に戻ったような気がしました。
●「夢の家のアリス」
一度に重なる多くの依頼、その一つが花盗人を捜すものだった。そして安梨沙は・・・ミステリとしては花盗人の話ですが、むしろ主題はそれ以外のところにあります。まさに思ってもいない結末。
どんな悪意もこの人の手にかかればオブラートに包まれたようになったしまう、そんな印象です。もちろん良い意味で。やはり表題作がもっとも「らしい話」といった感じがしました。その一方、後半はミステリとしてよりもシリーズを通しての展開を重視した雰囲気。次作に読者の期待をつないでいます。
収録作:「虹の家のアリス」「牢の家のアリス」「猫の家のアリス」「幻の家のアリス」「鏡の家のアリス」「夢の家のアリス」
関連作:『螺旋階段のアリス』
虹の家のアリス (文春文庫) | |
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